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2025.09.23

法面工事で見落とされる“上部リスク”と落石防止の実務

 

安全帯+ロープによる斜面作業

 上部環境確認が命を守る理由

 

法面工事におけるロープ作業は、建設業の中でも特に危険が伴う作業の一つです。

近畿一円で日々施工を行っていると、どれだけ慣れた現場であっても「上部環境の確認」が徹底されていないことでヒヤリとする場面に出会うことがあります。

安全帯とロープを正しく使用しているからといって安全が確保されているわけではありません。

特に、斜面作業では 「ロープの支点となる位置よりも、さらに上にある環境」把握することが極めて重要です。

ロープ講習などでも常に伝えていることですが、施工法面の上部には、作業者が認識していない危険因子が潜んでいます。

落石、浮き石、転石、地盤の緩み、植生の弱さ──これらは一見安定しているように見えても、実際にはわずかな揺れや振動で動き出すことがあります。

そしてその“揺れ”を引き起こしてしまうのが、実は我々自身なのです。

 

 

 

なぜ「上部確認」が

 絶対に必要なのか

 

ロープ作業中に発生する事故の多くは、作業位置より上、法肩上部からの落石によるものです。

落下する石や土砂は、作業者が直接触れていない場所から突然発生します。その理由のひとつが立木へのロープ緊結による揺れです。

我々は現場で、安全帯のメインロープを立木に緊結することがよくあります。

しかし、作業者の体重や移動、風の影響などで立木が揺れると、当然その揺れは周囲の地盤に伝わります。

地盤が揺れれば、その上に乗っている石や転石がわずかに動き、やがて落石につながる可能性があります。

木が揺れる → 地盤が揺れる → 石が動く → 落石

この流れは決して大げさではなく、実際に多くの事故の原因となっている現実です。

特に下記のような現場では危険性が飛躍的に高まります。

 

• 上部が急勾配の法面

• 元々転石群が多い地形

• 火山灰土や崩積土など、粒子が不安定な地質

• 過去に崩落履歴のある斜面

 

また、石の大きさは関係ありません。

1cmサイズの石であっても人に当たれば重大災害につながる破壊力を持つ ことは実証されています。

落下エネルギーは、わずか数十センチの落差でも十分危険です。実際に落石によって命を落とした方は多く、この事実を軽視した瞬間に事故は起きます。

 

 

安全帯だけでは守れない

  “落石”という脅威

 

多くの作業者が誤解しがちですが、安全帯とロープは 「墜落防止」 のための装備であり、落石を止める機能はありません。

作業者の体を守る仕組みであって、空中から飛んでくる石を防ぐ仕組みではないのです。

だからこそ、上部環境に危険がある場合は、次のような 物理的な追加対策 を組み合わせる必要があります。

 

仮吹付(ファイバー入りモルタル等)

 浮き石を固め、一定の安定性を確保するための応急的処置。

 

根固め工

 石や転石を斜面に定着させ、移動・落下のリスクを低減。

 

落石防止ネット(ロックネット等)

 小~中規模の落石を受け止め、作業空間への飛散を予防。

 

特にグリーンネットやトリカルネットのような合成繊維製ネットは軽量で取り扱いやすく、仮設的な落石対策として多くの現場で活用されています。

網目30〜37.5mm程度のネットは、浮き石・小規模転石の飛散抑制に適しており、施工性も良いという特徴があります。

ただし、ネットには限界があります。“ネットを押しのけるサイズの石” は防ぎきれない。

これも現場ではよく知られた事実です。

だからこそ、必要に応じて仮吹付や根固めを併用し、落石の根本原因を取り除く対策を検討することが重要です。

 

 

ロープ作業前に必ず実施すべき

 「上部環境チェック」

 

北摂constructionでも徹底している内容ですが、斜面に入る前に必ず下記項目を確認することで、落石リスクを大幅に減らせます。

 

1. 上部の地形状況を確認する

視覚的・触診的に、浮き石・転石・地盤の締まり具合・植生の根の張りを確認する。

 

2. 支点・立木の安定性を確認

立木の根元の状態、傾き、樹種、太さ、揺れやすさなどを確実に点検。

 

3. 浮き石・転石の除去

可能な範囲で取り除き、落下の可能性を最小化する。

 

4. 必要な補助措置の判断

ネット敷設、仮吹付、根固めのどれが必要かを事前に検討。

 

5. 作業手順の統一と安全管理者の配置

ロープの支点固定、メインロープ1人1本、保護具の確認、事前KYの実施など基本を徹底。

 

これらは推測ではなく、実際の施工管理・安全管理の基本として確立されている事項です。

 

 

「企業努力」と

 「安全への創意工夫」が

  求められる理由

 

法面工事は、現場環境が一つとして同じものはありません。地質、植生、構造物の位置関係、周辺の生活環境など、条件が常に異なります。

そのため、「仕様通りにやったから安全だ」という考えだけでは不十分です。

現場に応じて最適な対策を判断し、必要に応じて追加施工を提案する。これは 施工者の義務であり、命を守るための責任 です。

浮き石が多い斜面であれば、

 

落石防止ネットの設置(仮対策)

吹付・根固め(本対策)

 

といった段階的対策が求められます。

これらの対策を積極的に取り入れる姿勢こそ、北摂constructionとして、

また近畿一円で法面工事に携わる者としての誇りであり、施工者としての“本物の企業努力”と言えます。

 

 

「命は一つ」。

 だから上部確認を欠かさない

 

ロープ作業は安全帯があるから安全なのではありません。安全帯は墜落を防ぐが、落石は防げない。

この事実を理解し、上部環境の確認を最優先とすることが、事故を防ぐ最も確実な方法です。

「少しぐらい大丈夫だろう」

「いつも通りだから問題ない」

その油断が命を奪います。

北摂constructionは、近畿一円での法面工事に携わる一企業として、現場の安全文化をより高め、職人の命を守る施工を今後も徹底していきます。

 

 

 

参考資料

 

国土交通省

 「落石防止網(ロックネット)・落石防護柵設置工」

合成繊維製落石防止ネット

 (グリーンネット・トリカルネット等)の仕様情報

落石防止ネット設置工に関する標準的作業手順書

 (保護具・支点確認・浮き石除去などの基準を記載)