Contact

お知らせ News

2025.07.13

「思い込み」が事故を招く?

ヒューリスティックと

  法面工事の安全管理

 

北摂constructionでは、日々の法面工事において

人間の判断のクセ(ヒューリスティック)」

安全管理に与える影響を強く意識しています。

では、ヒューリスティックとは何なのか? そしてそれが、どうして現場の安全と関わるのでしょうか。

 

ヒューリスティックとは?

 

ヒューリスティックとは、

複雑な状況下で人が素早く判断するための「直感的な思考の近道」のことを指します。

心理学者ダニエル・カーネマンらによって提唱され、

以下のような特徴的なパターンがあります。

 

• 代表性ヒューリスティック:

  過去の典型的な例に基づいて判断するクセ

• 利用可能性ヒューリスティック:

  記憶に残っている情報に引っ張られて判断するクセ

• 確証バイアス:

  自分に都合の良い情報だけを選び取りがちなクセ

 

これらは日常生活では役立つことも多い反面、建設現場では思わぬリスクを見落とす原因にもなります。

 

 


 

法面工事における

ヒューリスティックの具体例

 

1. 「昨日も無事だったから、今日も大丈夫」

 

典型的な「利用可能性ヒューリスティック」です。

例えば、親綱(安全ロープ)を使わずに作業した経験があり、事故が起きなかった場合、「今回も問題ない」と思い込んでしまうことがあります。

 

2. 「あの人はベテランだから、安全にやってるはず」

 

これは「代表性ヒューリスティック」です。

経験豊富な作業員であっても、状況に応じた安全確認を怠れば事故につながります。

ベテランというイメージが、確認作業を省略させてしまう可能性があります。

 

3. 「自分はこれまで一度もケガをしたことがない」

 

これは「過去の成功体験」に基づく思い込みであり、リスクに対する慢心の一例です。

北摂constructionでは、

定期的なKY(危険予知)活動を通じて、

こうした思い込みを現場全体で

共有・見直すことを徹底しています。

 

対策:思い込みを打破する「仕組み化」

 

ヒューリスティックは人間の本能的な反応であり、

完全に消すことはできません。

だからこそ、

仕組みとして安全管理を徹底することが重要です。

 

• 親綱・ハーネスの着用状況を写真でチェック

• ヒヤリ・ハット事例を日報に記録し、共有する

• 定期的な安全教育で、思い込みの危険性を再確認

 

これらは、ヒューリスティックによる誤判断を防ぐための「環境設計」とも言えるでしょう。

 

 


 

“慣れ”が怖い?

法面工事に潜む心理的落とし穴

 

建設業では「慣れ」が作業の効率を生む反面、

ヒューマンエラーの温床にもなります。たとえば、

次のような心理状態が事故リスクを高めます。

 

• 慣れによる油断:

  「何百回もやってる作業だから」

  手順を飛ばしてしまう

• ルールの形骸化:

  「いつも注意されないから」と、

  ルールが“あってないもの”になる

• 空気を読む圧力:

  「声をかけるのは面倒…」「あの人に言いづらい…」

  という“集団の空気”が安全確認を妨げる

 

こうした心理的な落とし穴は、

単なる個人の問題ではなく、

職場環境の構造的な課題として捉える必要があります。

北摂constructionでは、

誰もが声を上げやすい職場づくりを目指し、

リーダーシップ研修や現場ミーティングでの

対話を強化しています

 

 


 

北摂constructionの取り組み

 

北摂constructionでは、

「人はミスをする」ことを前提とした

安全体制を整えています。

法面の急斜面での作業は、常に緊張感が求められます。

だからこそ、直感や経験に頼るのではなく、

ルールと確認に基づいた冷静な行動が必要です。

私たちは、ヒューリスティック──つまり

「人間の判断のクセ」──を正しく理解し、

それを前提にした安全管理の

“仕組み”づくりを進めています。

それはまるで、現場に張り巡らされた

「見えない防護柵」のような存在です。

人は、どんなに注意していても、

時に判断を誤ることがあります。

だからこそ、思い込みに気づける環境と仕組みが、

現場の安全を支える最大の力になります。

北摂constructionは、

今日も“人が人を守る”ための現場づくりを、

一つひとつ、積み重ねています。

 

 


 

 参考資料

 

1. ダニエル・カーネマン著

 『ファスト&スロー ― あなたの意思はどのように決まるか?』

https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/90410.html

 

2. 厚生労働省

 「建設業におけるリスクアセスメント実施マニュアル」

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/

 

3. 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所

 「ヒューマンエラーとその対策に関する研究報告書」

https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/srr.html