天狗だと勘違いした日から、法面職人は伸び始める
法面工事の現場で考える
「得意」と「慢心」の境界線
「天狗(てんぐ)になる」
この言葉、知らない人はいないと思います。
そして正直に聞きたいのですが、
天狗になったこと、ありませんか?
今現在、少し天狗になっていませんか?
私はというと、比較的冷静な性格なので、
正直そこまで頻繁にはなりません。
仮になったとしても、周りからすぐに笑われるので、
「あ、やってもうたな」と気づいて、すぐ元に戻ります。
ですが、世の中には天狗になりやすい人も確実に存在します。
ではそもそも、「天狗になる」とはどういう状態なのでしょうか。

天狗=悪?
本当にそうでしょうか。
一般的に「天狗になる」と聞くと、
ネガティブなイメージを持つ人が多いと思います。
• 調子に乗っている
• 周りが見えていない
• 偉そう
• 勘違いしている
確かに、そういう側面はあります。しかし一方で、こうも言えませんか?
得意になっている状態は、非常にポジティブだと。
自信がつき、「自分ならできる」と思える瞬間。
これは、成長過程において欠かせない感覚です。
特に建設業の現場では、
この「できる気がする」という感覚がなければ、
新しい工程にも、新しい役割にも挑戦できません。
調子に乗った若者が、どんどん仕事を覚えて成長していく姿これが結構好きです。
若者の天狗は「伸び代」
中年の天狗は「痛さ」
ここで重要なのが、年齢と立場です。
20代、30代前半での天狗は、挑戦の副産物であり、伸び代でもあります。
若いうちは、多少調子に乗って、多少失敗して、多少叱られてもいい。
なぜなら、その失敗は先輩や上司がフォローできる範囲だからです。
しかし、これが40歳前後になると話は変わります。
正直に言ってしまうと、この年代で天狗になっていると、ちょっと痛いです。
「今さら何を調子こいてるん?」
「今まで何してたん?」
そう思われても仕方ありません。
この年齢になると、天狗というよりも、
• 身の程知らず
• 世間知らず
• ワガママ
• 自己評価だけ高い人
こうしたレッテルを貼られてしまいます。
この年代の人に求められるのは、派手な自己主張ではなく、淡々と失敗し、淡々と成功する姿です。
それが一番カッコいい。
中年以降は
「全て自己責任」
この年齢になると、挑戦はすべて自己責任です。
• 失敗しても誰も守ってくれない
• 折れても、自分で立ち直るしかない
• フォローは期待できない
だからこそ、私は新しいことをやる時、必ず自己完結できる範囲で始めます。
周りを巻き込むのは、「成功する可能性が見えた後」です。
タイミングを誤ると、ただの「迷惑をかける大人」になりますからね。
天狗になってもいい。ただし条件が一つある
ここまで読んで、「じゃあ天狗になってもいいのか?」
と思った方もいると思います。答えは、YESです。
天狗になって、
失敗していい。
だからこそ、若者はどんどん天狗になればいいし、周囲はそれをフォローすればいい。
ただし、絶対にやってはいけないことが一つだけあります。それは、ごまかすこと、人のせいにすること、
これだけは、絶対にダメです。
ごまかした瞬間、人は成長をやめる。
• うまくいった時は自分の手柄
• 失敗した時は他人や環境のせい
これは、言語道断です。
「誰も見ていないから」
「誰にも言っていないから」
「バレないから」
そう思う気持ちも分かります。
ですが、当の本人が一番見ています。
自分自身は、すべてを知っています。
それを本当にごまかせますか?自分に嘘をついて、前に進めますか?
失敗を隠した瞬間、人は成長の芽を自分で摘み取っています。
ごまかさず、正直に報告し、正直に公開する。
そこから初めて、次の成長が始まります。
成功も失敗も、
蒔くまでは同じ種
面白いことに、成功の種と失敗の種は、蒔くまでは見分けがつきません。
やってみて、芽が出て、初めて分かる。
だからこそ、挑戦すること自体に意味があります。
天狗になって挑戦し、失敗して学び、成功して自信をつける。
この繰り返しが、人を本物にしていきます。

天狗とは何か
日本文化の視点から
日本の中世以降の説話や仏教的な考え方では、天狗は次のように描かれてきました。
「自分は偉い」「自分は特別だ」
こうした慢心の心を持つと、人は天狗になると戒められてきました。
重要なのは、天狗は無能な存在ではないという点です。
天狗とは、
• 実力はある
• 才能もある
• しかし調子に乗った結果、道を誤った姿
このような位置づけです。
つまり天狗は、実力者だからこそなり得る存在でもあるのです。建設業の現場でも同じです。
技術も経験もない人は、そもそも天狗にすらなれません。
天狗になるということは、それだけ評価され、結果を出し始めている証拠でもあります。
だからこそ、天狗になった時こそが分岐点なのです。
成長するか、転げ落ちるか。
その違いは、ごまかさず、自分と向き合えるかどうか。
そこに尽きます。
仕事における
「天狗」と成長の参考資料
1. 松尾芭蕉『奥の細道』注釈書
→ 慢心を戒める日本的価値観の背景理解。
2. 柳田國男『妖怪談義』
→ 天狗を含む日本の民間信仰と人間心理の関係。
3. 仏教用語辞典(岩波書店)「慢(まん)」の項
→ 自己過信・慢心が成長を妨げるという仏教思想。
4. ドラッカー『プロフェッショナルの条件』
→ 自己評価と責任の取り方に関する実務的視点。
5. 厚生労働省「職業能力開発と自己評価」
→ 成長と自己責任の関係性についての公的資料。

