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2026.02.22

人が危ない場所に  行かない法面現場へ

i-Constructionの現在地を、

 法面工事から見て考える

 

建設業界ではここ数年、「i-Construction」「ICT施工」「自動化」「無人化」という言葉を聞かない日はありません。

ただ、法面工事や法面保護工の現場に立つほど、こう感じやすいのも事実です。

 

• 結局、何がどこまで進んでいるのか分からない

• 自分たちは、この流れのどこにいるのか見えにくい

• “最新技術”という言葉だけが先行して、実感が伴いにくい

 

法面は地形も地質も毎回違い、段取りも危険も一点モノ。だからこそ、全体像が見えないと「取り残される不安」だけが残ります。

そこで本稿では、話を3つに絞って整理します。

 

1. なぜ始まったのか

2. いま、どこまで来ているのか

3. 国は、どこを完成形として描いているのか

 

この3点を一本の道として捉え直すと、法面保護工のi-construction“正体”が現場目線でも見えやすくなります。

 

 

すべての出発点は

 「人が足りない」という現実

 

i-Constructionは、夢の技術から始まったというより、現場が抱える“詰みかけ”の課題から始まりました。

国土交通省は、人口減少・高齢化のなかでもインフラ整備・維持管理を回し続けるために、生産性向上が不可欠だと整理しています。

建設業は長年、「人が頑張ることで成り立つ構造」でした。

しかし、危険作業が多く、熟練の勘に依存しやすい工程が残るほど、人材不足の影響は増幅します。

だから結論はシンプルです。

人がやらなくていい(やるべきでない)ところは、機械とデータに任せる。

これは“便利だから”ではなく、継続して国土を守るための現実解として選ばれた方向でした。

 

 

 

i-Constructionが

 動き出した2016年と

  「2025年度までの2割」

 

国土交通省は2016年度からi-Constructionを推進し、2025年度までに建設現場の生産性を2割向上する目標を掲げてきました。

ここで重要なのは、当初の中心が「いきなり無人化」ではなく、建設生産プロセス全体でICT等を使い、

“見える化”と標準化を進めることだった点です。

測量(3D計測)、設計、施工(ICT建機等)、出来形・検査(3次元データ)まで、データでつなぐ。まずはそこが出発点でした。

 

 

 

「技術はあるのに使いにくい」時代から、社会実装のフェーズ

 

自動運転の話は、建設の自動化と根っこが似ています。センサー、位置情報、通信、AI――。

これらは道路でも現場でも中核技術です。

そして制度面では、警察庁が整理する通り、

道路交通法改正により“特定自動運行(運転者がいない状態)”の許可制度が設けられ、

自動運転関係規定は2023年4月に施行されました。

この「制度が追いつく」動きは、建設側の自動化・遠隔化の社会実装にも同種の追い風になります。

 

 

 

いまの現在地は

 現場で回しながら、

  学ばせている段階

 

国土交通省の資料では、

i-ConstructionのトップランナーであるICT施工は直轄土木工事で普及が進み、作業時間短縮効果なども整理されています。

同時に、次のステージとして「ICT等の活用」から「自動化(オートメーション化)」へ上げる必要がある。と明確に示されています。

つまり現在地はこうです。

 

データ化・ICT活用は“特別”ではなくなってきた

• ただし、イレギュラーだらけの現場条件をどう飲み込ませるかが次の壁

• そのために、現場で回しながら標準化・自動化を押し上げる段階

 

法面工事はまさにここが本番です。毎回条件が違うからこそ、データを集め、再現し、判断を機械に渡す価値が最大化します。

 

 

国が描く完成形は

i-Construction 2.0」に

 明文化されている

 

近年の整理として国土交通省はi-Construction 2.0

(建設現場のオートメーション化)を掲げ、

2040年度までに少なくとも省人化3割

(=1.5倍の生産性向上)を目指す方針を示しています。

ここでの完成形は、現場感覚に翻訳すると次の3つに収束します。

 

1. 危険な場所に、人が行かない(人的被害リスクの低減)

 

2. 現場はデータで再現できる(3次元データで設計・施工・検査・維持管理まで連結)

 

3. 職人の価値が“体力”から“判断力”へ移る(人は監督・判断・例外処理に寄る)

 

ゴールは「人を減らす」ではなく、危ない・しんどい・ミスが起きやすい工程から人を離すことです。

 

 

法面工事は、完成形に

 一番近い=一番恩恵が大きい

 

建設業の法面工事は、危険源が明確です。高所、落石、崩壊、狭隘、重機の干渉、天候影響。

この環境で“人が危ない場所に行かない”を実現しようとすると、手段はかなり具体化します。

 

1) 3D計測・見える化(近づかないための前提)

人が近づかないには、まず現場を正確に把握し、共有できる形にする必要があります。

i-Constructionの枠組みでは、起工測量から3次元データを扱う運用が整理されています。

法面では、地形の複雑さがそのまま出来形・数量・安全計画に直結します。

だから「見える化」は、単なる効率化ではなく安全のインフラになります。

 

2) 出来形管理の3次元化(“説明できる施工”へ)

3次元計測技術を用いた出来形管理の要領(案)など、国の基準類も整備が進んでいます。

法面保護工は、出来形の説明が難しい場面が多い。そこが3次元で残せると、感覚ではなく根拠で説明できる領域が増えます。

 

3) 自動化・遠隔化(危険作業から人を離す本丸)

i-Construction 2.0は「自動化にステージを上げる」ことを明確に掲げています。

法面工事での自動化・遠隔化は、単なる目新しさではなく、“近づかない”の実装です。

 

 

元請が回し、下請が触る構図の中で下請でも進められること

 

現実として、データや段取り全体は元請側が握り、実作業は下請が担う構図が多い。ここは急には変わりません。

では、北摂constructionは法面工事として、下請が“いま”から成果を出す道筋はどこか。

ポイントは「大きい夢」よりも、小さく確実に“データで残る工程”を増やすことです。

 

• 測量・写真・出来形の記録を、後工程で使える形に寄せる(3次元、時系列、座標、クラウド共有など)

 

• 日々の施工判断を、言語化して残す(なぜその順序/なぜその手順/なぜその安全措置)

 

• 危険箇所の接近を減らす段取り(足場・親綱・立入管理に加え、遠隔確認の比率を上げる)

 

これを積むほど、次の段階(自動化・遠隔化)で「置き換え可能な作業」と「人がやるべき判断」の境界が見えてきます。

 

 

i-Constructionとは何か

(法面工事から見た定義)

 

本稿を一言で締めるなら、こうです。

i-Constructionは、人がしんどい・危ない・間違いやすい作業を、データと機械に任せる建設のやり方。

法面工事・法面保護工においては特に、

 

• 危ない場所に人が行かなくて済む方向へ寄せられる

• 施工が“感覚”ではなく“根拠”で説明できる方向へ寄る

 

この2つが、現場の価値を静かに底上げします。

 

 

始まり・現在地・完成形

 

• 始まりは、人が足りなくなったから(切実な現実)

 

• 現在地は、データ化を土台にしながら自動化へ上げていく途中(i-Construction 2.0)

 

• 完成形は、人が危ない場所に行かない建設(安全と判断力へのシフト)

 

そして、建設業 法面工事はこの流れの中心にあります。

危険で複雑で一点モノだからこそ、データと自動化の価値が最も大きい。

「下請でも出来るi-Constructionを探したい」という視点は、完成形に近い場所で仕事をしている証拠です。

 

 

参考資料

 

• 国土交通省

 「i-Construction(建設現場の生産性向上)」資料

• 国土交通省

 「i-Construction 2.0 ~建設現場~」

• 国土交通省

 「ICT活用工事(実施要領/基準類)」

• 国土交通省

 「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」

• 警察庁

 「自動運転(特定自動運行の許可制度)」