人が危ない場所に 行かない法面現場へ
i-Constructionの現在地を、
法面工事から見て考える
建設業界ではここ数年、「i-Construction」「ICT施工」「自動化」「無人化」という言葉を聞かない日はありません。
ただ、法面工事や法面保護工の現場に立つほど、こう感じやすいのも事実です。
• 結局、何がどこまで進んでいるのか分からない
• 自分たちは、この流れのどこにいるのか見えにくい
• “最新技術”という言葉だけが先行して、実感が伴いにくい
法面は地形も地質も毎回違い、段取りも危険も一点モノ。だからこそ、全体像が見えないと「取り残される不安」だけが残ります。
そこで本稿では、話を3つに絞って整理します。
1. なぜ始まったのか
2. いま、どこまで来ているのか
3. 国は、どこを完成形として描いているのか
この3点を一本の道として捉え直すと、法面保護工のi-constructionの“正体”が現場目線でも見えやすくなります。
すべての出発点は
「人が足りない」という現実
i-Constructionは、夢の技術から始まったというより、現場が抱える“詰みかけ”の課題から始まりました。
国土交通省は、人口減少・高齢化のなかでもインフラ整備・維持管理を回し続けるために、生産性向上が不可欠だと整理しています。
建設業は長年、「人が頑張ることで成り立つ構造」でした。
しかし、危険作業が多く、熟練の勘に依存しやすい工程が残るほど、人材不足の影響は増幅します。
だから結論はシンプルです。
人がやらなくていい(やるべきでない)ところは、機械とデータに任せる。
これは“便利だから”ではなく、継続して国土を守るための現実解として選ばれた方向でした。

i-Constructionが
動き出した2016年と
「2025年度までの2割」
国土交通省は2016年度からi-Constructionを推進し、2025年度までに建設現場の生産性を2割向上する目標を掲げてきました。
ここで重要なのは、当初の中心が「いきなり無人化」ではなく、建設生産プロセス全体でICT等を使い、
“見える化”と標準化を進めることだった点です。
測量(3D計測)、設計、施工(ICT建機等)、出来形・検査(3次元データ)まで、データでつなぐ。まずはそこが出発点でした。

「技術はあるのに使いにくい」時代から、社会実装のフェーズ
自動運転の話は、建設の自動化と根っこが似ています。センサー、位置情報、通信、AI――。
これらは道路でも現場でも中核技術です。
そして制度面では、警察庁が整理する通り、
道路交通法改正により“特定自動運行(運転者がいない状態)”の許可制度が設けられ、
自動運転関係規定は2023年4月に施行されました。
この「制度が追いつく」動きは、建設側の自動化・遠隔化の社会実装にも同種の追い風になります。

いまの現在地は
現場で回しながら、
学ばせている段階
国土交通省の資料では、
i-ConstructionのトップランナーであるICT施工は直轄土木工事で普及が進み、作業時間短縮効果なども整理されています。
同時に、次のステージとして「ICT等の活用」から「自動化(オートメーション化)」へ上げる必要がある。と明確に示されています。
つまり現在地はこうです。
• データ化・ICT活用は“特別”ではなくなってきた
• ただし、イレギュラーだらけの現場条件をどう飲み込ませるかが次の壁
• そのために、現場で回しながら標準化・自動化を押し上げる段階
法面工事はまさにここが本番です。毎回条件が違うからこそ、データを集め、再現し、判断を機械に渡す価値が最大化します。
国が描く完成形は
「i-Construction 2.0」に
明文化されている
近年の整理として国土交通省はi-Construction 2.0
(建設現場のオートメーション化)を掲げ、
2040年度までに少なくとも省人化3割
(=1.5倍の生産性向上)を目指す方針を示しています。
ここでの完成形は、現場感覚に翻訳すると次の3つに収束します。
1. 危険な場所に、人が行かない(人的被害リスクの低減)
2. 現場はデータで再現できる(3次元データで設計・施工・検査・維持管理まで連結)
3. 職人の価値が“体力”から“判断力”へ移る(人は監督・判断・例外処理に寄る)
ゴールは「人を減らす」ではなく、危ない・しんどい・ミスが起きやすい工程から人を離すことです。
法面工事は、完成形に
一番近い=一番恩恵が大きい
建設業の法面工事は、危険源が明確です。高所、落石、崩壊、狭隘、重機の干渉、天候影響。
この環境で“人が危ない場所に行かない”を実現しようとすると、手段はかなり具体化します。
1) 3D計測・見える化(近づかないための前提)
人が近づかないには、まず現場を正確に把握し、共有できる形にする必要があります。
i-Constructionの枠組みでは、起工測量から3次元データを扱う運用が整理されています。
法面では、地形の複雑さがそのまま出来形・数量・安全計画に直結します。
だから「見える化」は、単なる効率化ではなく安全のインフラになります。
2) 出来形管理の3次元化(“説明できる施工”へ)
3次元計測技術を用いた出来形管理の要領(案)など、国の基準類も整備が進んでいます。
法面保護工は、出来形の説明が難しい場面が多い。そこが3次元で残せると、感覚ではなく根拠で説明できる領域が増えます。
3) 自動化・遠隔化(危険作業から人を離す本丸)
i-Construction 2.0は「自動化にステージを上げる」ことを明確に掲げています。
法面工事での自動化・遠隔化は、単なる目新しさではなく、“近づかない”の実装です。
元請が回し、下請が触る構図の中で下請でも進められること
現実として、データや段取り全体は元請側が握り、実作業は下請が担う構図が多い。ここは急には変わりません。
では、北摂constructionは法面工事として、下請が“いま”から成果を出す道筋はどこか。
ポイントは「大きい夢」よりも、小さく確実に“データで残る工程”を増やすことです。
• 測量・写真・出来形の記録を、後工程で使える形に寄せる(3次元、時系列、座標、クラウド共有など)
• 日々の施工判断を、言語化して残す(なぜその順序/なぜその手順/なぜその安全措置)
• 危険箇所の接近を減らす段取り(足場・親綱・立入管理に加え、遠隔確認の比率を上げる)
これを積むほど、次の段階(自動化・遠隔化)で「置き換え可能な作業」と「人がやるべき判断」の境界が見えてきます。
i-Constructionとは何か
(法面工事から見た定義)
本稿を一言で締めるなら、こうです。
i-Constructionは、人がしんどい・危ない・間違いやすい作業を、データと機械に任せる建設のやり方。
法面工事・法面保護工においては特に、
• 危ない場所に人が行かなくて済む方向へ寄せられる
• 施工が“感覚”ではなく“根拠”で説明できる方向へ寄る
この2つが、現場の価値を静かに底上げします。
始まり・現在地・完成形
• 始まりは、人が足りなくなったから(切実な現実)
• 現在地は、データ化を土台にしながら自動化へ上げていく途中(i-Construction 2.0)
• 完成形は、人が危ない場所に行かない建設(安全と判断力へのシフト)
そして、建設業 法面工事はこの流れの中心にあります。
危険で複雑で一点モノだからこそ、データと自動化の価値が最も大きい。
「下請でも出来るi-Constructionを探したい」という視点は、完成形に近い場所で仕事をしている証拠です。
参考資料
• 国土交通省
「i-Construction(建設現場の生産性向上)」資料
• 国土交通省
「i-Construction 2.0 ~建設現場~」
• 国土交通省
「ICT活用工事(実施要領/基準類)」
• 国土交通省
「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」
• 警察庁
「自動運転(特定自動運行の許可制度)」

