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2026.01.11

建設業における役所とのコミュニケーション

 

「甲と乙は対等である」という

  契約条項と現場の現実

 

建設工事の請負契約において、契約約款にはしばしば「甲と乙は対等である」と規定されています。

これは発注者である“甲”(例えば国や地方自治体などの役所)と、受注者である“乙”(施工会社)が、契約上は平等な立場で仕事を進めるべきことを意味しています。

しかし、現実の現場ではこの理論通りに進行するケースは案外少なく、コミュニケーション不足がトラブルやストレスの根本原因になっていることが多いのです。

これは北摂constructionが近畿一円で法面工事などを行う中でも日常的に感じる課題でもあります。

 

 

 

契約約款にある“対等”の意味

 

まず基本として、建設工事標準請負契約約款は国交省や地方自治体の現場にも使われる、標準的な契約ルールとして存在します。

民間用・公共用を問わず、発注者と施工者が協議し合意した内容に基づき工事が進むことが前提です。

そのため、「甲と乙は対等」という契約上の関係は決して形だけの言葉ではなく、

両者が対等な立場で施工計画・工程・安全などについて協議・連絡・合意形成していくことが理想です。

しかし現実には、法面工事や公共工事の現場ではこの理想が実務として機能していない場面も多く見られます。

 

 

遅刻ひとつでも現れる“立場差”

 

ある国土交通省の立会での出来事です。

役所担当者が立会時刻から1時間近く遅れて到着しました。当然その立会を待つまで現場作業は停止し、次工程へ進めない職人たちはただ待つだけの時間が流れました。現場代理人は担当者に向かってこう言いました。

「1時間も遅刻して何とも思わないのか?電話1本くらい出来るだろ!」

その意見は単純で、常識的な要望です。

施工側では連絡なく予定が崩れることは工程管理・安全管理・職人配置に大きく影響する為、早めの連絡は必須事項になっています。

それに対し、役所担当者は立会を蹴って帰ってしまいました。

数時間後にようやく謝罪の電話が入ったとのことですが、この一連のやり取りから「契約上の対等さ」や

「お互いの立場への配慮」が現場では成立していないことが見えてきます。

 

 

 

なぜ“連絡一つ”が

  現場の信頼を左右するのか

 

遅れること自体は、交通事情や他業務との兼ね合いでどうしても起こり得ます。むしろ遅れそのものを責めるよりも、連絡をしないことが問題なのです。

施工側の現場監督は、例えば以下のような情報共有を日々徹底しています。

 

遅延時の連絡

到着見込み時間の数字での提示

先行可能な作業への移行

安全や環境配慮に関する事前説明

 

これらは単なる事務的連絡ではなく、現場全体の見通しを作るコミュニケーションです。

例えば

「すみません。交通渋滞で10分遅れます。○時○分頃着きます。」

という一文があるだけで、現場代理人や職人は

「じゃあその間に別の準備作業を進めよう」

と予定を振り替えることができます。

このように数字で予定を伝えることが現場の信頼と効率につながるのです。

役所でもこのような連絡プロセスを大事にする人は多く、「遅れる」という事実を伝えるだけでなく、

数字で到着目安を伝える」ことで現場側の不安や混乱は格段に減ります。

 

 

「役所だから」

 ではなく「人と人」

 

施工側では常に、「早めの連絡」「情報共有」「予測できる動き」を基本としています。

これは安全管理と信頼関係の基本だからです。

一方、役所側が現場に遅れて来る時の連絡が少ないのは、必ずしも故意ではなく、

日々複数現場や業務を抱えているためかもしれません。

ただし、重要なのは「担当者の立場」ではなく人として現場を動かす全員が同じ目的(現場を完成させる)に向かう姿勢です。

施工業者と役所との信頼関係が築けていないと、例えばこんな現象が起きます。

 

状況

影響

連絡なしの遅刻

工程停止・職人待機

後出し情報

スケジュール再調整が困難

立場優位な態度

相互理解が薄れる

共通目的の欠如

トラブルやストレス増

 

こうした状態が続くと、契約約款に書かれている「甲と乙は対等である」という言葉が形骸化してしまいます。

 

 

対等な関係とは何か

 

では、どうすれば“契約上の対等さ”に近づけるのか。

それは単に契約文言の通りに振る舞うことではなく、

 

常に状況共有を徹底すること

数字や予定を具体的に伝えること

双方が現場全体の目的を理解し合うこと

ミスが起きた時こそ誠実に対応すること

 

この4つを実践するだけで、現場の信頼は飛躍的に上がります。

特に公共工事では手続きや調整が多い分、情報共有の量と質がそのまま現場のスムーズさに直結します。

 

 

「甲と乙は対等である」

 の真の意味

 

契約条項上では対等でも、役所と施工会社には社会的な役割や責任の違いがあります。

しかし、工事現場を動かすのは人であり、コミュニケーションの質が信頼と結果を作るのです。

役所だから下請けだからではなく、互いの立場を尊重し、人として伝えるべきことは伝える文化を作ること。

それが北摂constructionが日々の法面工事で感じる、本当に大事なポイントです。

 

 

 

現場で意識したい

 

コミュニケーションのチェックリスト

✔ 現場立会の開始時間と連絡先の確認

✔ 遅れる場合は必ず電話+数字で到着目安を連絡

✔ 待機時間が発生した場合は代替作業の有無を確認

✔ 変更点・注意点は書面で残す(写真+メモ)

✔ 相手の立場や状況を想像して連絡方法を選ぶ

 

 

まとめ

 

契約約款にある「甲と乙は対等」という言葉は、現場で実践しなければただの飾り文句になってしまいます。

そのためには、役所であろうと企業であろうと、

人として相手を尊重し、誠実なコミュニケーションを積み重ねることが何より重要です。

これが結果として工程の円滑化や信頼関係を深め、法面工事をはじめとする多くの建設業現場でのトラブルを未然に防ぎます。

 

 

 

参考資料(公式・業界資料)

 

1. 建設工事標準請負契約約款

 (公共工事標準請負契約約款・民間用契約約款)

国交省が標準契約書として公開する請負契約約款の概要。公共・民間双方で使用される標準約款です。

 

2. 建設業における調査・設計・契約の

 立場と公正性に関する白書

契約締結時の対等性や当事者の立場を尊重する重要性が示された報告。

 

3. 公共工事の入札・契約方式ガイドライン

公共工事の契約方式とその適用効果、意思疎通のポイントについて整理されたガイドライン。