法面工事での地山の変位と向き合う
現場で感じる
「わずか数ミリ」の重み
法面工事(のりめん)は、見た目以上に「地山(じやま)」
土の中で何が起こっているか──それを把握し、
この“地山の変位”というわずかな動きを、どう読み取り、
その数ミリの違いが「安全」と「災害」を分けるのです。

わずか5mmの世界
現場基準の現実
一般的に、法面工事現場では「3mmで警戒」「5mmで中止」
もちろん、地域や管轄の土木事務所、
しかし多くの現場経験者が、この数値を“肌感覚として”
現場には「伸縮計」「ひずみ計」「荷重計」など、
これらの数値をもとに、役所やコンサルが総合的に判断し、「工事続行」か「中止」かを決定します。
とはいえ、現場に立つ我々施工側も、
地山の肌触り、削ったときの音、湧水の変化、雨の降り方──そうした“現場五感”も同じくらい大切な情報なのです。

雨がすべてを変える
「地山が緩む」瞬間
晴れの日には安定していた地山も、
地中に水が浸透し、地山内部の間隙水圧(かんげきすいあつ)
「昨日まで大丈夫だったのに…」という言葉が、
地滑り現場ではよく聞かれる理由がここにあります。
地山は、乾燥時に比べて水を含んだだけで重量が増加します。その“重さ”が地表を押し下げ、変位を進行させてしまう。
特に粘性土質(粘土系)の地質では、

「水を持つ山」
地滑り地帯の共通点
地滑りが発生しやすい現場には、ある共通点があります。それは「山が水を持っている」ということ。
関西エリアの地滑り地帯を例に挙げると、
かつて湧水や伏流水が豊富だった場所が多く、
地質の奥深くに水脈が走っています。
こうした地盤では、降雨のたびに水が滞留し、
地山全体が“湿ったスポンジ”のように変形を始めます。
このような現場では「集水井(しゅうすいせい)」
これは地中の水を抜き、地山の安定を保つための設備です。
しかし、集水井があるということは「
つまり、雨量が多い日はとくに警戒が必要です。

データと感覚の
“あいだ”にある安全判断
計測器は嘘をつきません。しかし、
データだけでは現場の“空気”までは読めません。
「なんか今日は山が重たい」
「湧水の色が濁ってきた」
「削ってると音が鈍い」
こうした職人の感覚は、長年の経験からくる“データ外の情報”
実際、地山崩壊を未然に防げた現場の多くは、
このような感覚を尊重し、
この“現場感覚×データ”の両輪で安全管理を行っています。
施工計画書の数字はあくまで「基準」であり、
最終判断は「現場の声」が握っているのです。

関西の法面会社としての使命
関西は、地形的に山地と都市が近接しており、
住宅地の裏に崖があるような場所も少なくありません。
そのため、法面工事の安全管理は地域の安心と直結しています。
「わずか5mmの変位」を軽視することは、
「家一軒分の安全」を見過ごすことにも繋がりかねません。
北摂constructionでは、
関西各地の法面現場での経験をもとに、
地山の挙動をリアルタイムで把握する管理体制を重視しています。
• 雨天時の監視強化
• 集水井・水抜きボーリングの機能維持点検
• 施工中の定期測定報告
• 緊急時の中止判断と情報共有ルール
これらを徹底し、
「安全な施工=地域の未来の守り」
「止める勇気」も技術のうち
法面工事は“止める勇気”が必要な仕事です。
5mmという数字の裏には、
「これ以上は危ない」という判断の重みが詰まっています。
効率や納期を優先すれば、
「もう少しだけ」「次のステップまで」
真の施工管理能力です。
北摂constructionは、
その「止める勇気」を技術の一部と捉え、
安全を最優先にした現場づくりを続けています。

数ミリの変位が、未来を守る
地山の変位は、人間の目では見えません。
しかし、そのわずかな動きの中に、
自然の警告が確かに含まれています。
3mmで警戒、5mmで中止。
この“たった数ミリ”の違いを読み解く力が、
法面工事のプロとしての誇りであり、使命です。
北摂constructionは、関西の地に根ざし、
未来へ続く安全なインフラを築くために、
今日も「地山の声」に耳を傾けています。

参考資料
• 国土交通省
「地すべり防止工事技術指針(令和3年度改訂版)」
• 兵庫県土木部砂防課
「地すべり地における観測と警戒基準」
• 京都府建設交通部
「法面工事の施工管理マニュアル」
• 日本地すべり学会
『地すべりと斜面災害の基礎知識』
• 現場経験・観測データ
(北摂construction)

