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2025.12.14

法面工事での地山の変位と向き合う

現場で感じる

 「わずか数ミリ」の重み

 

法面工事(のりめん)は、見た目以上に「地山(じやま)」呼吸を感じながら進める仕事です。

土の中で何が起こっているか──それを把握し、崩壊を未然に防ぐための判断を日々求められます。

この“地山の変位”というわずかな動きを、どう読み取り、どう判断するか。

その数ミリの違いが「安全」と「災害」を分けるのです。

 

 

わずか5mmの世界

 現場基準の現実

 

一般的に、法面工事現場では「3mmで警戒」「5mmで中止」という目安が使われることが多いです。

もちろん、地域や管轄の土木事務所、発注者によって基準は異なります。

しかし多くの現場経験者が、この数値を“肌感覚として”覚えているのではないでしょうか。

現場には「伸縮計」「ひずみ計」「荷重計」など、地山のわずかな動きを検知する計測器が設置されています。

これらの数値をもとに、役所やコンサルが総合的に判断し、「工事続行」「中止」かを決定します。

とはいえ、現場に立つ我々施工側も、ただ機械の数値を待つだけではありません。

地山の肌触り、削ったときの音、湧水の変化、雨の降り方──そうした“現場五感”も同じくらい大切な情報なのです。

 

 

雨がすべてを変える

 「地山が緩む」瞬間

 

晴れの日には安定していた地山も、雨が降り出すと一気に状況が変わります。

地中に水が浸透し、地山内部の間隙水圧(かんげきすいあつ)が上がると、岩や土の粒子同士の結びつきが緩み、滑り面が形成される。

「昨日まで大丈夫だったのに…」という言葉が、

地滑り現場ではよく聞かれる理由がここにあります。

地山は、乾燥時に比べて水を含んだだけで重量が増加します。その“重さ”が地表を押し下げ、変位を進行させてしまう。

特に粘性土質(粘土系)の地質では、一度緩んだら元に戻りにくく、再度の掘削や補強が必要になることもあります。

 

 

「水を持つ山」

 地滑り地帯の共通点

 

地滑りが発生しやすい現場には、ある共通点があります。それは「山が水を持っている」ということ。

関西エリアの地滑り地帯を例に挙げると、

かつて湧水や伏流水が豊富だった場所が多く、

地質の奥深くに水脈が走っています。

こうした地盤では、降雨のたびに水が滞留し、

地山全体が“湿ったスポンジ”のように変形を始めます。

このような現場では「集水井(しゅうすいせい)」が施工されることが多いです。

これは地中の水を抜き、地山の安定を保つための設備です。

しかし、集水井があるということは水を抜かなければ安定しない地山」だという証拠でもあります。

つまり、雨量が多い日はとくに警戒が必要です。

 

 

データと感覚の

  “あいだ”にある安全判断

 

計測器は嘘をつきません。しかし、

データだけでは現場の“空気”までは読めません。

 

「なんか今日は山が重たい」

「湧水の色が濁ってきた」

「削ってると音が鈍い」

 

こうした職人の感覚は、長年の経験からくる“データ外の情報”です。

実際、地山崩壊を未然に防げた現場の多くは、

このような感覚を尊重し、早期に中止判断をしたケースが多いのです。北摂constructionとしても、

この“現場感覚×データ”両輪で安全管理を行っています。

施工計画書の数字はあくまで「基準」であり、

最終判断は「現場の声」が握っているのです。

 

 

関西の法面会社としての使命

 

関西は、地形的に山地と都市が近接しており、

住宅地の裏に崖があるような場所も少なくありません。

そのため、法面工事の安全管理は地域の安心と直結しています。

「わずか5mmの変位」を軽視することは、

「家一軒分の安全」を見過ごすことにも繋がりかねません。

北摂constructionでは、

関西各地の法面現場での経験をもとに、

地山の挙動をリアルタイムで把握する管理体制を重視しています。

 

• 雨天時の監視強化

• 集水井・水抜きボーリングの機能維持点検

• 施工中の定期測定報告

• 緊急時の中止判断と情報共有ルール

 

これらを徹底し、

「安全な施工=地域の未来の守り」を目指しています。

 

 

「止める勇気」も技術のうち

 

法面工事は“止める勇気”が必要な仕事です。

5mmという数字の裏には、

「これ以上は危ない」という判断の重みが詰まっています。

効率や納期を優先すれば、

「もう少しだけ」「次のステップまで」と進めたくなるのが人情ですが、そこで立ち止まれるかどうかが、

真の施工管理能力です。

北摂constructionは、

その「止める勇気」を技術の一部と捉え、

安全を最優先にした現場づくりを続けています。

 

 

数ミリの変位が、未来を守る

 

地山の変位は、人間の目では見えません。

しかし、そのわずかな動きの中に、

自然の警告が確かに含まれています。

3mmで警戒、5mmで中止。

この“たった数ミリ”の違いを読み解く力が、

法面工事のプロとしての誇りであり、使命です。

北摂constructionは、関西の地に根ざし、

未来へ続く安全なインフラを築くために、

今日も「地山の声」に耳を傾けています。

 

 

参考資料

 

• 国土交通省

 「地すべり防止工事技術指針(令和3年度改訂版)」

• 兵庫県土木部砂防課

 「地すべり地における観測と警戒基準」

• 京都府建設交通部

 「法面工事の施工管理マニュアル」

• 日本地すべり学会

 『地すべりと斜面災害の基礎知識』

• 現場経験・観測データ

 (北摂construction)