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2025.11.02

建設業は主張合戦より“折り合い力”

 

全員を納得させることの難しさ

  “折り合い力”と組織の成長

 

建設業の現場では、日々さまざまな立場の人たちが関わりながら仕事を進めています。役所の担当者、元請、下請、職人、施工管理者それぞれに立場と考え方があり、全員を納得させることは容易ではありません。

特に法面工事のように地形・地質・施工条件が複雑な工種では、書籍・机上の知識」「現場の実態」ギャップが浮き彫りになりやすく、現場対応の柔軟さが問われます。

兵庫県で自営し、関西各地で法面工事を手がける北摂constructionでは、現場経験を通じて「絶妙な折り合いのライン」を見出すことの重要性を日々感じています。

本記事では、現場のリアルなエピソードを交えながら、関係者間の意見のズレとその乗り越え方について解説します。

 

 

 

役所と現場の

  書籍と実務のギャップ

 

施工管理をしていると、役所や発注者の担当者からの質問に「???」となることがよくあります。

書籍や要領書をしっかり勉強してきた担当者ほど、現場の実態との違いに気づかず、「本にはこう書いてある!」主張する場面も少なくありません。

しかし、現場では地形・地質・天候・工程など、机上では想定できない要素が複雑に絡み合います。実際に書籍通りでは施工できないケースも多々あり、施工側はその担当者の意向に合わせて“書類上の体(テイ)”を作ることがあります。

結果、その担当者は施工側が整えた資料を「真実」として鵜呑みにし、それを自らの経験値として蓄積してしまう。このまま次の現場に引き継がれると、後続の施工業者はその前例”に縛られ、余計な苦労を強いられることもあるのです。

もちろん、こういった担当者には柔軟な話が通じにくい場合もあり、施工側が「体裁を整える」対応を取らざるを得ないこともあります。

これは建設業界では珍しくない現象であり、「現場のリアル」机上の理論」のギャップをどう橋渡しするかが、現場を円滑に進める鍵になります。

 

 

 

職人と監督の

  “逆ベクトル”問題

 

現場では、職人と現場監督(施工管理)意識の方向性が真逆になることがあります。

 

職人 → 「どうやったら手間を減らして早く終わらせられるか」

 

監督 → 「どうやったら品質を高め、段取り良く、安全に進められるか」

 

どちらが悪いという話ではなく、立場の違いから来る当然の発想の差です。

監督が品質と安全ばかりを重視して現場を押し切ると、職人側は不満が溜まり、作業効率も下がります。逆に職人側のやり方に完全に寄せてしまうと、品質が確保できず、検査や後工程でトラブルになることもあります。

ここで重要なのは、

“どちらか一方に偏らせないこと”です。

お互いの意見を丁寧に聞き、現場の状況に合わせて折り合いをつけることで、スムーズな施工が実現します。

法面工事では天候や地質によって作業内容が刻々と変化するため、この柔軟な調整力が非常に重要です。

 

 

意見を言いすぎる人 

  vs 言わない人

 

現場や会議で特に問題になるのが、「自己主張の強すぎる人」全く意見を言わない人」両極端です。

 

• 主張ばかりする人

周囲がうんざりして議論が前に進まない。ただし“前に進めよう”とする姿勢はまだ評価できます。

 

• 主張しない人(ダンマリタイプ)

その場では何も言わず、後で愚痴だけ言うタイプ。現場の改善には全く繋がらず、成長もしない。

 

議論の場では、自分の意見をしっかり伝え、同時に相手の話を聞く”姿勢を持つことが重要です。

お互いの立場や考え方を理解することで、初めて妥協点・折衷案が見えてきます。

 

 

意見のズレは“当然”。

  重要なのは前に進める力

 

通常の会社でも、誰かと誰かの意見が食い違うのは当たり前です。お互いが「自分の正義」を持っているからこそ噛み合わないのは当然。重要なのは、相違点と共通点を見つけ、建設的に前へ進める力です。

役所・元請・下請・職人…立場は違っても、目指す方向は現場を安全・確実に進め、良いものを作る」ことで一致しているはずです。そこに立ち返れば、議論の糸口は必ず見つかります。

 

 

 

最高の現場とは

  お互いを認め合う現場

 

最終的には、お互いの良いところを認め合い、悪いところをフォローし合える関係が築けると、現場は驚くほどスムーズに進みます。

役所・元請・下請・職人・監督が一丸となり、どうしたら一番良いものができるか」を考えられる現場は、完成後の満足度も非常に高いものです。

全員を完全に納得させることは不可能かもしれません。しかし、絶妙な折り合いのライン”を探し出すことは可能です。そのためには、まずお互いの意見をしっかり出し合い、聞き合うところから始めましょう。

これは法面工事だけでなく、建設業全体、さらには事業拡大や組織づくりにも通じる大切な視点です。

 

 

 

まとめ

 

現場で全員を納得させることは、簡単なことではありません。机上と現場、職人と監督、元請と下請、それぞれの立場の違いがあるからこそ折り合いをつける力が重要です。

兵庫県で自営し、関西の法面会社として日々現場に向き合う北摂constructionは、この“折り合い力”こそが、良い現場と事業拡大の土台になると考えています。

お互いをフォローし合える関係を築くことで、現場も組織も、もっと強く成長していけるはずです。

 

 

 

参考資料

 

・国土交通省

  「建設生産システムの効率化」

・日本建設業連合会

  「発注者・施工者協働に関する提言」

・建設業労働災害防止協会 安全衛生資料

・厚生労働省・経済産業省 各種組織マネジメント資料