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2025.06.15

二季化する“熱中症リスク”と向き合う

建設業の現場が

  取るべき新たな対策とは

 

近年、「熱中症」といえば真夏のリスク

されてきましたが、

春や秋にも注意が必要な“二季化”現象が

注目されています。

これは特に屋外での作業が中心となる建設業や、

急勾配地での作業が多い法面工事において、

従来以上に深刻な課題となっています。

本記事では、

「熱中症の二季化」がなぜ起きているのか、

北摂constructionの現場で実践している対策や

その背景となる法的・気象的知識について解説します。

 

 


 

熱中症は

  “夏だけのリスク”ではない

 

従来、熱中症は「梅雨明け~8月中旬」にかけての問題とされてきました。

しかし最近では、5月や9月でも熱中症による

救急搬送が増加しており、

実際に消防庁の統計によると、

「2023年の5月~9月の熱中症による救急搬送者数は合計9万1,467人。そのうち5月と9月だけで1万6,000人を超えており、全体の17%に達している」

 

(出典:総務省消防庁「熱中症による救急搬送状況」より)

 

という状況が報告されています。

この傾向は、

地球温暖化に伴う「季節の境界の曖昧化」

特に春先から秋にかけての

高温多湿の長期化に起因しています。

つまり、熱中症が実質“春・夏・秋の3季”にまたがってリスク化しているのです。

 

 


 

建設業・法面工事での

“二季化熱中症”の具体的リスク

 

1. 暑さに身体が

 慣れていない時期の発症

 

5月や9月の熱中症の多くは、

気温が高くなくても身体が暑さに慣れていない」

ことが原因です。

法面作業では、

高所で風通しが良いと思われがちですが、

実際は直射日光と照り返しの中で

長時間身体を動かすことが多く、

体感温度は真夏と変わらないこともあります。

 

2. “暑熱順化”の

 タイミングを誤るリスク

 

熱中症に耐える身体をつくる「暑熱順化」は、

数日~2週間かかると言われています。

ところが、5月や9月は

「今日は涼しいが明日は真夏日」というような

気候の乱高下が激しく、

作業員の身体が順応しづらい点が問題です。

 

 


 

北摂constructionの

 現場で行っている対策

 

■ 春・秋でも“夏季対策”を継続

 

北摂constructionでは、4月末~10月初旬までは

以下の熱中症警戒強化月間として対策を行っています。

 

• 朝礼時のWBGT値(暑さ指数)計測と共有

• 水分・塩分補給タイム(30分~1時間おき)

• 空調服・ファン付きベストの着用義務化

• 休憩所にはスポーツドリンク・氷を常備

• 日陰スペースや簡易テントの仮設

 

さらに作業時間の調整(早出・早上がり)や、

中高年作業員の負担軽減策も導入。

これは年齢と熱中症リスクの関係性が指摘

されているためです。

 

参考:厚労省「職場における熱中症予防対策マニュアル」)

 

 


 

法面工事に特化した対策の工夫

 

法面工事では、勾配地での移動と作業により

通常の建設現場よりも体力の消耗が激しいため、

熱中症のリスクも倍増します。

北摂constructionでは、

以下のような工夫を現場ごとに採用しています。

 

• 親綱にぶら下がる作業員の休憩インターバル管理

• 法面の“日陰になる方向”を意識した工程調整

• 散水車での法面冷却作業(一部現場)

• 個人の体調チェックアプリの導入(現場単位での試験運用)

 

これらは単なる“夏季限定策”ではなく、

春・秋の暑い日にも共通して適用するのが重要です。

 

 


 

高齢作業員への配慮も不可欠

 

近年の建設業では、

60代以上の作業員比率が年々増加しています。

高齢者は体温調整機能が低下しており、

軽度の熱中症が命に関わることもあります。

そのため北摂constructionでは、

高齢作業員に限っては

5月・9月も“夏季就労制限”を実施し、

以下のような独自配慮を行っています。

 

• 午前中中心の勤務(13時完全撤収)

• 休憩回数の増加・階層移動時の補助人員配置

• 体調報告カードでの当日コンディション確認

 

 


 

建設業界全体が

  “熱中症の二季化”に

  どう備えるか

 

このような気候変動のなか、

建設業全体での対応も求められています。

2023年からは国交省主導の

「働き方改革+暑さ対策」支援策として、

以下のような動きが出ています。

 

• 「建設業の熱中症ガイドライン2023」の改訂

 (国交省)

• 現場単位でのWBGT計測の義務化検討

• 熱中症発症後の迅速な報告体制の整備

 (労災補償にも関係)

 

北摂constructionでは、

これらの情報を積極的に取り入れ、

“安全と効率”を両立する現場運営を目指しています。

 

 


 

まとめ

  “二季化”の意識が、

  現場の命を守る

 

熱中症は「真夏のリスク」から、

「春秋を含む長期リスク」へと変化しています。

特に屋外の法面工事や建設業現場においては、

暑さとの戦いはすでに通年化しています。

北摂constructionでは、経験や慣習に頼らず、

最新の気象データや指針をもとに科学的な対策と職人への配慮を融合させることで、すべての作業員の安全を守っています。

これからの建設現場には、「二季化熱中症」という

新たな視点と、それに応じた柔軟な対応が不可欠です。

 

 


 

【参考文献・出典】

 

• 総務省消防庁

  「令和5年(2023年)熱中症による救急搬送状況」

• 厚生労働省

  「職場における熱中症予防対策マニュアル」

• 国土交通省

  「建設現場の熱中症対策ガイドライン2023」

• 日本気象協会「熱中症ゼロへ」プロジェクト