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2025.03.09

外国人技能実習制度の見直しで何が変わる?

法面工の現場から見る

  人材問題のリアル

 

建設業における

 人材不足と制度改革の背景

 

日本の建設業界、とくに土木工事や法面工事の現場では、長年にわたり人材不足が続いています。

この構造的な問題に対応するため、2024年6月、

政府は新たに”「育成就労制度」“の創設を柱とした法案を可決・成立させました【出典①】。

この新制度は、

従来の実習外国人技能制度に代わるものであり、

外国人労働者の人権保護とキャリア形成支援を制度の根幹に据えています。

特に、技能習得を通じて特定技能制度への

円滑な移行を可能にし、

長期的な戦力化を目指すものです。

 

 


 

人材育成とキャリアの継続性

 

これまでの技能実習制度は「国際貢献」を建前としながら、実態は単純労働力としての活用に偏っていました。

新たな育成就労制度では、受け入れ企業に対し、

人材育成計画の策定と実行義務が課されます。

また、在留期間は原則3年、

条件を満たせば特定技能1号に移行可能とされており、

制度としての一貫性が強化されました【出典②】。

 

 


 

育った頃に帰国という現実

 

私たち北摂constructionでは、日々法面工事の現場で実務を行う中で、外国人実習生の導入について複雑な思いを抱いています。

法面工のような専門工事では、ロープ高所作業、吹付工や法枠工の施工など、

技術を習得するまでに最低3年はかかります。

まさに一人前になったタイミングで、

在留期限による離職・帰国を迎える現行制度には、

大きなロスを感じざるを得ません。

 

 


 

安価な労働力ではない、という現実

 

「外国人労働者はコストが安い」という認識は根強いですが、実際には教育や生活支援コストを含めれば、

日本人と同等かそれ以上の費用がかかります。

制度を適切に運用するなら、

安さを求めた導入はむしろ逆効果です。

さらに制度の悪用が失踪問題の一因ともされています。

過酷な労働条件や契約違反が報道される中、

使い捨ての構造」を

招かない企業姿勢が求められています出典③】。

 

 


 

日本人育成を軸に

 

当社では、「未来を担うのは日本人の若者であるべきだ」という理念のもと、日本人の技術者育成を基本方針としています。

もちろん、永住者や定住者など、地域に根差す意思を持つ外国人は仲間として歓迎しますが、

単なる“労働力の穴埋め”としての

受け入れは慎重に見極めています。

育成には時間がかかります。

しかし、だからこそ意味があるのです。

建設業の技術は“人”が支えている――

その原点に立ち返り、

私たちは現場から制度のあり方を考え続けます。

 

 


 

■ 引用・出典情報

 

① 法務省「育成就労制度の創設について」

(2024年6月14日)

https://www.moj.go.jp/isa/03_00116.html

② 厚生労働省「外国人雇用対策の現状と課題」

(令和6年)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/index.html

③ 朝日新聞「実習生制度見直し法案 可決、育成就労制度へ」(2024年6月14日)

https://www.asahi.com/articles/ASS6F1Q92S6FUTIL019M.html